ウエディングドレスといえば白。穢れなき白は目を細めてしまうほど眩しいもの。
しかし、それとは打って変わってダークファンタジーのような世界を連想させるドレスが流行った時代があったようです。ウエディングドレスの歴史もあわせてどうぞ。
暗色のウエディングドレス
ヨーロッパにキリスト教が普及するにともなって、結婚式は教会で行われるようになりました。
その時の衣装がウエディングドレスの始まりとされますが、花嫁の経済力や地位などを誇示するためのものでした。絹やベルベットの布地に金や銀の糸で刺繍が施された、とても豪華なものだったそうです。
16世紀末にスペイン宮廷での流行を背景に、黒などの暗い色がウエディングドレスの色として流行りました。黒のドレスに白いベールというスタイルも流行したようです。今ではちょっとイメージしにくいですが…。
また、そのような色の服は手入れがし易いことや祝祭日でも着られるということで、20世紀初頭まで広く着られました。その間の19世紀に入ってから、かの有名なヴィクトリア女王によって白いウエディングドレスが普及した、という流れです。
日本での洋装
東アジアでは、白というと死を連想させる色で、好まれませんでした。しかし、西洋文化が入って来るにつれて日本や中国、韓国や台湾などでも白いドレスが着られるようになりました。
日本で初めてウエディングドレスが着られたのは、1873年のこと。磯部於平(いそべ おつね)という方が着て、その二年後に森有礼(日本の武士であり政治家・外交官)も西洋の式を挙げました。
当時は国内にウエディングドレスがないため、国外から取り寄せたものでした。洋装での式の受け入れ体制が不十分なこともあって、なかなか普及しません。
しかし、日本が洋風化していくことをはじめ、洋装は和装よりも廉価であることや、着脱の楽なところもありファッションデザイナーによる努力の結果、1960年代後半になってから人気となっていきました。
確かに、洋装は和装に比べて着るのも脱ぐのも楽で、動きやすいという利点もあります。
着物のように何本もの紐や帯で縛られずにすむし、着せる方も着せられる方も楽だし、肩が凝らないし…。(こうして日本の文化は影を薄めていくのでしょう…)
白無垢というものがありますが、室町時代から江戸時代にかけて生と死のどちらでも使われていました。花嫁衣裳、出産、葬礼、経帷子(死に装束)、切腹の衣服とされました。その歴史の背景があれば、尚更受け入れがたいのも頷けます。
洋装が日本に馴染むには時間がかかった
広大な土地と海を越えて、はるばるやって来た異国の服に警戒したくなる気持ちも分からなくは…ないですが。その点、今は何にでも好奇心旺盛で色々なものが取り入れられています。
それが良いことか悪いことかはさておき、受け入れの許容範囲が広くなっているということなのでしょう。
洋装での挙式は今では珍しくはありませんが、日本に馴染むまで長い時間が必要でした。今日では、新たに何かが取り入れられると、馴染むスピードも早まっているように思います。
流行は時代と同じく巡り巡っているのだとか。もしかしたら、黒いドレスと真っ白い透けたベールの組み合わせが、再び脚光を浴びる日がやって来るのかも…。