背中をノック?
診察のときに、お医者さんは患者さんの背中をトントンとすることがあります。
これは決して、雪だるま作りに誘ったり「誰か入ってませんか?」と扉をノックするようにトントンとしてボケをかましているのではなく、ちゃんとした根拠があるようです。
打診法
体に直に触れているため、触診法かと思われるかもしれませんが、指で背中をトントンとするのは「打診法」と呼ばれています。
打診法は、J・L・アウエンブルッガーというオーストリアの医師が考えだしたものです。
どのようにして打診法ができたかというと、彼の父親が酒樽を叩いて音で酒の量を確認していたことからきているそうです。
酒樽をトントンするというのは、輸出入などの時に中身がちゃんと入っているか確認するためにもしていたようです。酒樽を買ったつもりが空の樽だったとなると大問題です。
お医者さんは背中を叩いて、肺に水が溜まっていないかなどを音で判断します。肺などに何かしら異常があれば、健康な人と音は違うとのこと。
酒樽の話で例えると、軽い響きのある音がすれば空の樽、つまり人で言うところの空気で満たされた健康な肺。逆に低い音がすれば、樽には液体がたっぷり入っていて、肺だと水が入っている可能性があると判断するということです。
だた、医療の進歩でMRIやCTなどがある現代、そうした打診法をするお医者さんは少なくなってきているようです。
医学界の職人技
直に見えない肺を叩くことで異常がないか判断する。それにはやはり、経験がものをいいます。音で判断するとは、さながらピアノの調律師みたいですね。
また、背中を叩くだけで心臓の大きさまでわかるのだとか。心臓が肥大化していないか、肺炎がないか、ガンがないかも確かめることができるそうです。
音で確認するというのは、お医者さんではなくてもすることがあります。
この缶の中にあるお菓子、全部食べたっけ?このスイカは丸々と太っているけど、身にはスがないか?木材なんかでも、木に含まれている水分量が違うと音も変わります。振ったり叩いたりして、ものの良し悪しを判断することがあります。
しかしその対象が人となると、かなり難しそうです。医療にはそぐわない言葉かもしれませんが、まさしく職人技。
最後に
打診法は酒樽の中身を確認することからきている。医学と樽に関りがあるなんて、どんなことがヒントになるか分からないものです。アンテナを張り巡らしていたら、思いもよらない発想や発見に出会えるかもしれません。
ところで、重さの単位にトン(t)がありますね。ここまでくるとお察しかもしれませんが、この「トン」は酒樽を叩いた時の音がもとになっているのだそう。(諸説あり)