花嫁といえば
少しイメージしてみてください。真っ赤なバージンロードの両脇に並んだ椅子に飾られた装花から漂う芳香。ゲストの見守る目と牧師の声、緊張感も伴う厳かな一時。日常では味わえない空気感。
タキシードを着た新郎が牧師に続いて入場する。胸元には花嫁のブーケと同じ花を飾り、扉の方を向いて花嫁が父親と入場するのを待つ。扉が開くと、花嫁が左隣の正装した父親の腕に手を添えて立っている。
二人はこれまでの時をなぞるように少しづつ前へ進む。祭壇前まで来ると、待っていた新郎へと受け渡される新婦。牧師のほうを向き、席に着くゲストから見ると右に新郎、左に新婦が並んで立っている。
これは式の一つのパターンで、新郎が先に入場せず、新郎新婦が共に入場することもあります。他にも、できる演出が多彩でアットホームな雰囲気となる人前式(牧師はおらず、新郎新婦はゲストの方を向いて司会者が式を進行する)などありますが、なんにしても主役がいます。
先ほどのイメージで、その主役の一人である新婦はどんな風でしたか?頭の方から、真っ白い繊細なベール、そして真っ白いドレス。
トレーンの長さがどうのとか、ドレスのデザインがどうのとかはとりあえず置いておくとして…。
たいていは白のイメージではないでしょうか。ここでは花嫁=白いドレスというのはどこからきたのかを書いていきます。
流行したきっかけは有名な女王だった
63年と7か月の間在位したヴィクトリア女王は、今でも有名な方です。きっと誰もがその名を耳にしたことはあるかと思います。
ヴィクトリア女王が、従弟のザクセン=コーブルク=ゴータ公子アルバートとの結婚で純白のドレスを着たことから、ヨーロッパ中で大流行しました。
現在でも、有名人が着たドレスや結婚式の雰囲気が、これから挙式披露宴をしようという新郎新婦に影響を与えるように、昔もそのような傾向があったようです。
服の流行と同じで、一言に結婚式といってもその時々によって人気な色や演出があります。ですが、そもそもの結婚式で白いドレスというのは、ヴィクトリア女王が着てから一気に普及していったという歴史があるようです。
色とりどりの宝飾品で飾る王室の慣例がある中、二人は結婚生活の始まりを白いキャンバスで祝いました。真っ白なドレスを着るというのは、当時では珍しく異例で強く人々の印象に残ったことだと思います。
若い花嫁の女王が、オレンジの花の冠に白いドレスを身にまとった姿は輝いていた、とのこと。今ではお目にかかれない光景です。
こうして考えると、その時にしか見れない光景を見ることって生きているうちにあまりないような気がしてきます。一目見てみたかった…。1840年へとつながる時空の扉はありませんかね?
アメリカでも讃えられた白いドレス
「素材は何であれ、白が(花嫁に)もっともふさわしい色であるということは、昔からの慣習が証明している。それは少女時代の純粋さ、無垢、そして、選ばれた一人にだけ与えられる、穢れなき心の象徴なのである」
1849年アメリカの『ゴーディズ・レディズ・ブック』誌に、白いドレスを讃える記事が載ったそうです。
白という色は、澱みがなく清らかという印象を受けるのはいつの時代も同じ。話したことや会ったことのない遥か昔の人も、同じことを思っていたようです。
今日でも白いドレスを選び試着したり、挙式で白を身にまとったりしている花嫁がいることでしょう。花嫁=白いドレスという流行は、今も生き続けているのです。