ジョン・ファーンドン著(小田島恒志・小田島則子訳):オックスフォード&ケンブリッジ大学
世界一「考えさせられる」入試問題 「あなたは自分を利口だと思いますか?」
河出文庫
誰もが一度は耳にしたことがあるであろう大学、オックスフォード大学とケンブリッジ大学。
一般的な学校に通う人や通っていた人からすれば未知なる世界。より高みを目指すべく、オックスフォード大学やケンブリッジ大学の試験に挑む入学志望者は、どのような質問を投げかけられているのか。
大学に興味があるなし関係なく、その問いを介して考え方や視界が広がるかもしれない。
ふと立ち止まって
本書はケンブリッジ大学のジーザス・カレッジを卒業した著者が、入試試験での質問内容をもとに様々な角度から物事を考えている。思考する楽しみというのを改めて教えてくれた。
アイデアが求められる風潮になりつつある現代では、思考体力が必要となってくることもある。何かを見かけてその瞬間にぱっと思いつくこともあるかもしれないが、考え続けて開ける道もある。
あくまでも、著者本人も記述しているように本書は一つの意見や可能性に過ぎないけれど、それでも十分に新たな思考の仕方の導き手だ。
考えることが遊ぶとでもいうような質問とそれに対する考察は、読んでいて最後まで飽きない。そしていつの間にか私も考えることで遊んでいた。
頭の中でパズルや神経衰弱をしているような楽しさは癖になる。こうかな?ここかな?とあれこれ照らし合わせていき、あれ、でもやっぱりここは違うかも…と頭の体操がてら考えてみるのもいいかもしれない。ミソは「ちょっとの知識」と「ひねり」だ。
ジャンルは様々
超現実的なことから非現実的なことまでの大学側の質問を、分かり易くどう考えればよいのかの道しるべを立ててくれている。
法学、地理、医学などジャンルを問わず。環境問題と貧困や病はどちらがより危機なのかという質問があると思いきや、脳のどこが好きかなどと面食らってしまうような質問もある。
そんなのどうやって答えればいいんだ…と毎度思ってしまうが、大抵そういった質問の本質は別のところにある。
私がもし、この本を読まずに脳の好きな場所を答えるなら、海馬と言うだろう。名前がかっこいいし、情報の分別をするという点が綺麗好きっぽくて気が合いそうだ(?)けれど、実際に試験で聞かれてとっさに落ち着いてこう答えられるだろうか!?
こんな質問も…
タイムトラベルをするならいつ?や、聖書についてならまだしも、いよいよ分かりっこないと目を白黒させるしかない質問もある。
牛一頭に世界の何パーセントの水が含まれているのかなんて、普通分からない。けれどもこの質問の輪郭に近い部分を勉強していれば、それこそ「ちょっとの知識」と「ひねり」で(あと計算力)で大体の数は割り出せる。
思考遊びだけでなく、ちょっとした雑学も知れるところがおいしい。
さいごに
計算をしたり暗記をしたりと、脳の使い方は様々。でもそれは、大抵既存のものをレールに沿って歩いているに過ぎない。
一人ひとり世界をどう見ているかは分からないし、正解もない。
この本によって、もしかしたら新たな思考の道が開けてより一層世界が面白く、そしておそろしく見えるようになる…かもしれない。
なぜおそろしいかは、読んでみてからのお楽しみ。
ところで、ちょっとタイトルが長いと思う。
そこで色々考えてみた結果、「質問です。あなたは自分を利口だと思いますか?」でもいいんじゃないかと思うけれど、それだけだと「は?」となって手に取ってくれないかもしれない。馬鹿にしているのかと思う人もいるかだろう。
そこで、かの有名な大学名が表にあるだけで「えっ、なになに?」と目に留めてくれやすくなるのなら、背表紙で三行に分けるほどの長いタイトルが結局はいいのか…。
ううむ、表紙からすでに考えさせられるとは。