最近、店で「セルフレジ」が次々と導入されている。
店舗の規模にもよるが、イオンの食品売り場に設置されたのが筆者の記憶では最も古い。
GUも、近年セルフレジが導入された。二年ほど前、久々に服を買おうと行ってみると、見慣れない機械が仰々しく並んでいる光景に驚くことがあった。
セルフレジは、広い空と田んぼがあるのどかな地域にも普及しつつある。
何でも便利になりシンプルさや時間短縮、人員削減を図る現代、ちょっと立ち止まって考えてみることにした。
平成は目まぐるしく変化が起きた。平成生まれがそう思うのだから、きっと平成を迎えた年にすでに大人だった人たちからみれば、時代の変化に飽きることが尚更なかったのではないだろうか。
年中無休営業しているスーパーマーケットであったことを踏まえて、考えて行こうと思う。
考えられるメリット
とりあえず考えられるメリットを書いてみることにする。
・時間削減
・回転率向上
・店側の負担の軽減
・誤算回避
・精算場のスペースの効率化
・体を動かせる
・時間削減
夕方や年末、買い物をするお客さんが多い。レジを待つ列の最後尾が商品棚にまでくると、まだ買い物を楽しみたいお客さんの壁となる。そこで、セルフレジを設置して、一度に会計できる人数を増やして回転率を良くする。すると、レジ付近に延々と壁があり、お客さんが気狭しく買い物をするという状態をなるべく起きにくくすることができる。
買い物は、店内を一巡しただけで終わることはあまりない。途中であれも要るんだった、やっぱりあれも買っておこうと、あれこれ考えながら買い物する女性たちは、迷路でもやっているのかというような動きをする。そしてこう思うこともある。
「本当はレジの傍を通った方が、欲しい商品が置かれているコーナーに近いけれど、レジ待ちの列がいくつもあって通りにくそうだから遠回りしよう」
より早くレジ待ちのお客さんを捌けることができたら、この買い物中のお客さんの迂回する時間を削減することもできる。
・回転率向上・店員の負担の軽減
回転率を良くするということは、より多くのお客さんを短い時間で捌けることができ、お客さんの待ち時間も短縮することができる。何より店員の負担を減らすこともできる。
そうすると、こんなメリットも見えてくる。全てのお客さんの持って来る商品をピッピする体力を、セルフレジと分け合うことで、店員の疲労が軽減でき終業時間まで安定した仕事ができるのではないだろうか。また他の作業ができる時間や人が増え、気持ちにも余裕が生まれ、結果的に店の質の向上にも繋がる。
ただ、こうやって考えても文字のように上手く事を運べないのが現実であるから、そこが難しいところ。
・誤算回避
機械は正確であるから誤算がない。本来の料金よりも多くお金を払ったり、消費者の払う額が少なかったりといったトラブルが防げる。これは店舗に対する利用客側の信用にも直結する。
・精算場のスペースの効率化
セルフレジは、これまでのレジのように長テーブルではなく、銀行のATMのように一機ごとに独立している。その為、お客さん一人当たりに対する精算する場所のスペース削減もできる。
効率関連で言うと、一風変わったレジを見かけた。あるスーパーマーケットで、買う商品の数が五品以下の人専用のレジがあった。
買い物カートの上に山を築いた主婦や家族に混じって、飲み物や弁当一つを持って並んでいると、何故たったこれだけの為に長い時間待たなければならないのだと思うこともあるだろう。そこに五品以下専用レジがあれば、お客さんもサクサク進むレジの列を無理なく待てて、早く購入することができる。
・体を動かせる
お金を払い終えるまでお客さんは暇だ。籠だけ置いて他のことをするためにその場を離れることはできないし、勿論順番を抜かすなんてことはもっての外だ。つまり、順番が来てさらに店員が商品をピッピしてから、お客さんはやっとお金を払うというアクションをする。
レジに並びお金を払い買い物を終了する時間の内、セルフレジでは通常のレジよりかはいくらか体を動かせる。また、子どもも手伝いができて、買い物は親について回る暇な時間だと思うことも減るだろう。これは大きなメリットではなかろうか。
デメリット
セルフレジ導入は、回転率向上ができて店員の負担も減らすことができる。しかし、便利になったが故の弊害も生じている。
・機械への抵抗
・セルフレジの使い方がわかりにくい
・一人あたりのかかる時間
・機械への抵抗
セルフレジだと、ちょっと躊躇ってしまう人も少なくないのではないかと思う。カゴに入れた商品は、結果的に自分の物になるのだから会計は各自でどうぞ、とあしらわれている気にもなる。
何でも好奇心旺盛な人なら、よしやってみよう!と思うかもしれないが、無機質な角ばった機械は何だか近寄りがたい。これは機械慣れしていない人や、お年寄りなら尚更ではないだろうか。セルフレジを見て、一気に色々な情報が目に飛び込み、どこにお金を入れるか、どこで商品をスキャンするか、どうすればよいのかあわあわする。
・セルフレジの使い方がわかりにくい
セルフレジへ行くとその一角のどこかに、セルフレジの使い方、と大きな文字で説明書きがある。丁寧に一機ごとに説明書が置かれている店もある。しかし、それを読んですぐにわかったらいいものの、もしかしたら「?」だらけになる人もいるかもしれない。店によって画面の表示が違ったり、使い方が違うこともある。
・一人あたりのかかる時間
セルフレジの前に立つお爺さんが、セルフレジの担当の店員に説明を受けながら機械に挑んでいた。
セルフレジに慣れてしまえばの話だが、店員がピッピするレジがまだ残る中、セルフレジへ向かうのが日常化している人は少ないかもしれない。従来のレジとセルフレジがある場合、セルフレジの方が空いているというケースもよくあることだ。
実際、店が空いている時間帯ならセルフレジではなく人に頼むと思う。結局の所、人にしてもらうのが楽で、店員の方が慣れていてスキャンし始めてから「合計〇〇円です」と言うまでのスピードが速い。
説明を見ながらや、おずおずと操作している時間を加算すると、レジに並んだ方がスキャンしながら袋詰めをする作業はなかなかに忙しなく、詰め方を考えなければならない。まさかパンの上に1リットルの牛乳を置くわけにはいくまい。
誰しもが経験したことがあるとは言えないレジ。お客さん一人または一組あたりにかかる時間がかかってしまうと、時間削減の策に歪が生まれる。
また、人は時に狙っていたわけでもないのに、おかしなミスをすることがある。お金を機械に入れる際に、お札を入れる場所に硬貨を入れてしまうことも起こりうる。
最後に
今尚便利さを追求する現代の傾向の延長線上に生まれた、ハイテクな「セルフレジ」について考えてみた。
便利なものには返って不便に思える部分もある。
しかし、逆に安心している人もいるのかもしれない。自分が欲しいと思う物が一時は人に手渡されるわけで、人の握ったおにぎりが食べられない人や、病的な潔癖症の人のくすぶっていた心の奥底を救ったかもしれない。
また、防犯面に関してはセルフレジ本体も含めてしっかりと対策されている。万引きの件数が増えたということはないらしい。
テレビを観ている時、スウェーデンにハンドスキャナーを片手に欲しい商品をスキャンしてカゴに入れていきながら店を回り、最後にお金を払うシステムの店があるのを知った。スーパーの会員になるとハンドスキャナーが使えるとのこと。スキャンしながらの買い物のスタイルは効率的に思える。そしてちょっと楽しそうでもある。
フランスでは、自分の買った商品がコンベアで流れて来て、その場で買い物袋に次々と詰め込むスタイルだという。袋詰めをする台が無く、次の人が待っているために早さが問われる。
せっせと自分で精算するのは、高齢の方は苦労しそうだ。こうして考えてみると、高齢者が多くなる中、セルフレジは時間効率より人員削減に強く傾いているのだろう。