道草を食う

乗馬日記8:感動するほどの真面目さ~inクレイン倉敷~

いつの世も女の世界は複雑だ。きっと昔の女同士のにらみ合いのエピソードや、巧みな嫌がらせを歴史の教科書に載せたら国語辞書以上に分厚くなってしまうだろう。(あったら読んでみたい)

ややこしいつもりはないのに、どうもそう思われることがしばしばある女というやつは、馬界でもあるようだ…。

近日、歴史を揺るがす記録を出し続けている競馬。秋華賞、菊花賞に続いて天皇賞が毎週日曜日の午後に開催された。まさしくスポーツの秋。

牝馬が脚光を浴びているのは見ていて気持ちがいい。現世に生きる女性に向けてのエールを送っているようにも思える。

女性の活躍の場が広がっている現在、裏でどんなにらみ合いが繰り広げられているのか考えるのはそっとしておくことにしよう…。

 

私が主役よ

 

今回、背中に乗らせていただいたのは牝馬。当クラブでは牡馬が多く、2度目の牝馬で身構える。

犬や猫でも女の子というのは、ちょっと難しい。ちょっと調子にのると冷たい目で見られるような、そっけないところがあるイメージ。しまいには、よかれと思ってしたことが有難迷惑の結果になり、こちらが頭を下げる。

そして女の子同士でもこれまた難しい。

人間界の女性同士でも、合わない相手とはとことん合わないし、逆に合う相手とはずっと話が続く。この人は自分にとって良さそうだ、この人とはどう頑張っても合わない!と察知して距離を測るというのは意識しなくてもするものだ。

これはもはや古来から繰り返された人間の営みの一つと言っても過言ではないだろう。

黒い体にツヤツヤな毛が美しいマジェスティ。馬上から見ると、首がすらっとしていていかにも女性らしい。

同じレッスンを受ける人がおらず、幸運にもインストラクターの方と一対一ですることに。

始まって秒で個性が爆発(いい意味で)。サークル内をえんえんと歩き続けるマジェスティ。

それはもう、涙がでそうになるくらい真面目な歩きぶりだ。

この時、自分を牛だと思っているのではないかと疑わしくなる馬、サミーを思い出す。レッスン中の居眠り運転疑惑が浮上していたサミーとは真反対。(人ではなく馬が居眠りとはギャグじみている)

さっさっさっと歩き続けるマジェスティ。ずーっとせかせか歩く。

ぼんやりと人物像が浮かび上がる。きっとマジェスティが人間だったら、秘書のポジションにいそうだ。またはそつなく仕事をこなし、同僚や後輩から憧れの的となる存在。上司に良い評価をされても謙遜ししとやかに受け止める。

が、これは個人的なイメージにすぎず、実際は女王様タイプのようだ。色々と気難しい。

参加している馬が1頭だからか、いきいきと歩き続ける彼女。他をよせつけない高貴な雰囲気を…感じるような。

 

自動運転・馬ver.

 

馬にも気持ちがある。合図を出されて動くからといって、その後もずっと歩いてくれるとは限らない。大抵はだんだんと速度が落ちてやがて止まる。集中していないと、視線が他所を向いたり耳があっちこっちに動いて周りの情報を拾う。

合図だしてこないな、よしサボれるぞ。そうして喜々として立ち止まる…かは馬によりけりだと思うが、合図を出して常歩から軽速歩、速歩と速度を変えられるかは、言葉無しの意思疎通ができるかにかかっている。馬の反応の良さと、人側の合図の力加減をすり合わせることは難しい。

申し訳ないくらいに歩いてくれるマジェスティは、なんと90分ほとんど自動で動き続けた。このサークルは私たちが歩くところでしょう、いくらでも動きますよ。やる気スイッチを切るのはレッスン場を出てからって決めてるの、とでも言うように。

人間側も自動バランスボールに90分乗っていい運動になったのであった。

一体、時間制限が無いと何分間歩き続けるのか気になる…。

 

おわり

 

乗せていただいたマジェスティのもとへ、お礼のニンジンを持って行くと…。

 

 

ちょっと、はやくその手にあるものくれない?とおっしゃっているようです。

前掻きを見て安心しました、あなたもれっきとした馬だったのですね…。もはや真面目な人間かと…。

 

 

写真が白とびしても凛々しいお目め。