香川県三豊市のJR詫間(たくま)駅から歩いて港へ向かう。
駅を見て回ったりコンビニで食糧調達、写真を撮っていたりしているとあっという間に時間は過ぎる。
午前8時30分発の便に乗るために先を急ぐ。(思っていたより距離がある)
詫間港から船で20分ほど。
静かな港から出発して潮風を浴びながら、見えてきたのは志士島。

一周4キロに満たない小さな島、こんもり青々と木々が生えている。
屋内に何名か乗っていたらしく、その人達と共に上陸。
自分一人だけだと思っていたので何だか安堵。こんな所でも一人外国の方を見かけるとは、なかなか良い旅をしているのだろう。
昔は1000人以上が過ごしていたというが、今では上空の方で鳥の鳴き声が呼応するように飛び交っている。


花の島と言われるだけあって、ちょうど沢山開花している。
建造物はあるものの、人の姿がなく時がここだけ止まっているような感じ。海を渡り異世界に来たような気分だ。

古めかしい家や細道の間を行くと、すぐに坂道が。ふうむ、さっそくこの角度とは何だか嫌な予感。思ったよりも険しい道のりになりそうだな、と歩を進める。
それにしても時間帯もあるのか、鳥のおしゃべりが盛り上がっている様子。それだけでこの島の日常の一部を体験しているようだ。
今や町中の学校1クラス分にも届かないほどの人口となった志士島。ここに住まう方々も聞いているのだろうな。

道自体は綺麗で案内看板もあり迷うことも無さそう。
この坂道を歩くと、島に住んでいた人々は足腰が丈夫だったろうなぁと思う。
カメラを一旦仕舞い込み、腹をくくり歩くことに専念する。何か取りたい時は立ち止まってカメラを取り出し撮る。足場が悪い所では特に鉄則。結局何度も立ち止まる。船の時間までは時間はたっぷりあるから大丈夫だ。
楠以外にもスポットがあるとのことで、先にメインの楠以外を見て回ろうと思った…。
しかしながら、行く時季が大分冬から遠のいた新緑が目立つ頃。当然虫が元気にお散歩している。猪注意という看板があったが、蜂もエンジン全開で活動していた。

※蜂がいたので遠目に眺める瀬戸内海。横尾の辻。
せっかく来たのだからと、草木と蜘蛛の巣を掻き分け行ってみたものの、結局ゆっくり見て回れたのは楠の場所くらいだった。人通りが多いわけでもないし、自然を五感で堪能するにはうってつけだろう。


ということで分岐点に戻り、大楠の方へと向かうと見覚えのある亀が指を差している。
なんというか、思っていたより野性味を感じる道のりを通った後にみると、その笑顔が悪意めいて見える。

歩いていると、サワサワ…と聞いているだけで心地よい音が届いて来る。滝でもあるのだろうか。

あの二度目のニコニコ亀の看板から少し下っていくと、視界が開け左手に大楠が現れた。
両腕を広げて迎えてくれる巨木。サワサワという音の主はここにいた。

流石に下まで行くことはできないようになっている。今見えている幹は土砂によって一部埋もれてしまっているというのだから、自然の驚異を感じる。木にとってはあらたに土をかぶせて貰った感覚だろうか。

大楠のある広場は気持ちの良い風が吹いている。ここで瀬戸内海を見守り続けてきた木は、今何を思うのだろう。きっとあの橋が出来ていくのも見ていたのだろうな。海の上を濡れずに渡れるようにした人の力というのも計り知れない。

時間的にも体力的にも早めの下山。定刻近くにパラパラと人が集合し、船にて戻るのであった。